コロワイドと大戸屋~白馬の騎士は現れるか~
昨日、大変おもしろいニュースが舞い込んで来ましたね。
僕は大戸屋とコロワイドの関係は前から面白がって見ていた(性格が非常に悪い)ので、「とうとう強硬手段に出たかぁ~wwww」と映画を見ているような気分でワクワクしております。
一応の前提共有ですが
大戸屋は皆さんご存知の通り、チェーンで定食屋を展開しているあの「大戸屋」です。
コロワイドは、「かっぱ寿司」や「牛角」など様々な外食ブランドを持っている大手外食チェーンです。
(以下、公式サイトからの引用)
今回は、このニュースで把握しておくべきと思われるポイントを3つ解説します!
②TOBとは
③企業買収防止策として何が取れるのか
これらをざっくり解説していきます。
(間違って理解しているものがあればご指摘願いますm(_ _)m)
目次
①コロワイドと大戸屋の因縁
まず把握しておくべき前提ですが、実は前々からコロワイドは大戸屋の株式を19%も保有している株主でした。
ですので当然、株主総会にはコロワイド側の担当者が出席し、意見を述べるわけです。
まぁ色々と論点はあるんですが、その中でも今回の件に関わってくるのは「セントラルキッチンの導入」についてでしょう。
セントラルキッチンとは、集中調理施設のこと(
)です。
…と言われてもよくわからないのでカンタンに言うと、
①料理の下地を1つの工場で行う
②それを各店舗に配送する
③①と②により店内調理時間が減ってコスト削減!
ってのがセントラルキッチンです。
(参考:http://www.ritsumei.ac.jp/ec/why/why01.html/)
このセントラルキッチンの導入について、両者は全く違う主張をしています。(参考:
大戸屋がコロワイドの株主提案に猛反対する訳 | 外食 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
)
・コロワイド側
とにかくコスト削減!セントラルキッチンも導入!
・大戸屋側
「店内調理で手作りのできたての味を提供する」というのが理念なんだ!
参考としてリンクに貼っている記事を読めば分かりますが、バッチバチの対立です。バッチバチ。
個人的には「セントラルキッチンは必ずしも"質の低下"を意味しないので、部分的にでも取り入れて経営の効率化を図るべきだし、そもそも大戸屋の商品を冷凍食品として売り出してるやんあんたら」と思ってしまいますが…
まぁともかく、以前からコロワイドと大戸屋間ではこういったいざこざがありました。おそらく、コロワイド側はセントラルキッチンの導入等の改革を強引に進めるために、経営意思決定に深く携わることの出来るレベル(=51%以上)の株式取得に乗り出したのでは無いかと思います。
②TOBとはそもそも何?
大戸屋とコロワイドのいざこざ、目的がなんとなく分かったところで、そもそも「TOBとはなんぞや」「何で数ある企業買収方法の中でTOBなのか」って話をしたいと思います。
そもそもの前提として、企業買収にはいくつかの方法があります。
代表的なところで言えば以下の3つがあります。
①TOB(今回のやつ)
②LBO
③MBO
ここで重要なのは、
A,それぞれの買収方法をざっくり理解する
B,それぞれの買収方法の差をざっくり理解する
C,その中で「なぜ」TOBを選ぶのかを理解する
の3つです。(実際には、MBOの手段としてLBOを行うなどキレイには分けられないんですけど、分かりやすくするためにめちゃくちゃ単純化します)
では、「A,それぞれの買収方法をざっくり理解する」からいきます!
①TOB
Take Over Bid(株式公開買い付け)の略。
TOBとは、カンタンに言うと
不特定多数に向けて「市場より高い値段でその株式買うよ~」って宣言すること
です(参考:
0からわかるコロワイドのTOBニュースについて|前田塾|note
)。
株式"公開"買い付けなので、おおっぴらに株式を買い付けるわけですね。
②LBO
Leveraged Buyout(レバレッジは"テコ"のこと)の略。
買収先の企業の収益力を担保としてお金を借り入れて、そのお金で企業を買っちゃうことです。
カンタンに言うと、
すげぇ利益をあげそうな企業を、借金して買っちゃうことで、高いリターンを得る
ことです。(参考:
LBOとは?仕組みやメリット・デメリットを図解!成功のポイントは?【事例あり】 | M&A・事業承継ならM&A総合研究所
)
③MBO
Management Buyoutの略です。
マネジメント、これは経営層のことですね。
マネジメント(=経営層)がBuyout(=株の買い占め)を行うという、まぁ字面の通りの企業買収です。
前提知識として、経営層ってのは必ずしも企業の所有者(=オーナー)では無いわけです。株式会社の最大の特徴は「経営と所有の分離」にあるので。(参考:
https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-12153.html
)
なので、経営層が実質的な支配権を得るために、親会社などから株式を買い付けて独立することがあります。
それがMBOなわけですね。
めっちゃ単純化しちゃうと、
子会社が「独立した~い」って時にやるやつ
です。(参考:
MBO(マネジメント・バイアウト)とは?方法・目的、メリットを解説【事例15選】 | M&A・事業承継ならM&A総合研究所
)
これは、実例を見た方が理解が早い気がするので、リンクを見ていただけると理解が早いかと!
では次!
B,それぞれの買収方法の差をざっくり理解する
①TOB…株式を不特定多数が持っている時にやるやつ
②LBO…借金してでも良い企業を買って、リターンが欲しい時にやるやつ
③MBO…子会社が「独立した~い」って言った時のやつ
C,その中で「なぜ」TOBを選ぶのかを理解する
これはもう楽勝ですね。
③のMBOは目的が違うので除外。
②のLBOは(もしかしたら自己資本では無く借金しているかもですし、TOBならLBOじゃないという単純な話でも無いですが)コロナの影響や販管費の高さ等から、大戸屋は少なくとも現状では高い収益性が見込めないので、一般的なLBOの目的とは逸れるでしょう。
てことは、①のTOBが妥当じゃね?ってことだと思います。
さらに言うと、大戸屋は個人株主が65%を占めている(参考:
https://www.data-max.co.jp/article/36617
)ため、買い付けるのは「不特定多数の個人株主」に対してであり、実質TOBしか選択肢はありません。
TOBとは何ぞやってのが分かったところで、買収防止策のお勉強です。
③どのような買収防止策を取れるのか
買収ってのは
①大戸屋とコロワイドみたいな、バチバチの企業がやる「敵対的買収」
②ファミマと伊藤忠みたいな、お友達同士の企業がやる「友好的買収」
の2種類があります。
今回みたいな敵対的買収の場合、やっぱり買収される側としては「買収されたくないよ~」と思います。
そこで、企業は敵対的買収をされないように「買収防止策」というのを取るわけです。
今回はその中でも「ホワイトナイト」を紹介します!
敵対的買収ってのはいわば敵から襲撃を受けている状態ですよね。
そして、事前にポイズンピル、ゴールデン・パラシュートなどの策を打っておかなければ敵にそのまま攻め込まれて城は陥落します。
このホワイトナイト、カンタンに言うと、
敵対的な企業に買収されるくらいなら、友好的な企業に買い取ってもらう
ということです。
まぁ苦肉の策です。
過去には、ドン・キホーテから敵対的TOBを仕掛けられたオリジン東秀が、イオンに要請してホワイトナイトを引き受けてもらった例があるそうですね。(参考:
ホワイトナイト│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券
)
コロワイドはどういう買収防止策を考えているのか
では大戸屋はホワイトナイトなどの買収防止策をちゃんと考えているのでしょうか!
…ぶっちゃけ言うと、これは「別に考えていない」が正解です。(5月26日時点では)
インタビュー記事を読めば分かりますが、本当に何も考えていないというかアホだなぁと思ってしまうのは僕だけですか??
大戸屋がコロワイドの株主提案に猛反対する訳 | 外食 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
「外食産業の中で独自の進化をしてきたので、同業者だと難しいのでは」
「商社やメーカーなら考えてやらないでも無い」
(負けたらどうするかと聞かれて)「負ける前提の話はしない」
…こういう態度が良くないんじゃないですかね(笑)
何でもそうですけど、負けることも考慮したリスク管理しないとトップとしてどうなんすかと思っちゃいますよね。
Twitterでは「セントラルキッチン導入で店の平凡化が進む」みたいな意見がありましたが、普通にそんな単純な話じゃないし、どっちもどっちな話だと思いますがね。
おしまい